<<一年と十一ヶ月というやつは<<

あれはダージリンが苦かったのか。それとも、自らが浮かべる苦笑いを俯瞰している自らの感傷が若かったのだろうか。多分、後者なのだろう。ある程度までの形容詞の多さは曲がり角に待ち受ける事実に相応しいと歴史は決めているから。

まぁいい。砂時計からゆっくり落ちていくさらさらとする砂粒を文字通り粒立てて見つめていると、彼女は堰を切ったように、話を切り出した。彼女は文字通りガール・フレンドで、ガール・フレンドから切り出された話というやつは、彼女の井戸の底に永らく沈んでいたせいで生々しく主観性に富んでいた。

要約をすれば、彼女は僕の致命的な一点のみを改善してはくれやしないかと頼み込んできたのだ。いや、頼み込んできたというよりは、「そうしなければ、私はあなたと別れるわよ。」毅然と勝ちん気さえ含んでいたかもしれない。彼女にとって、今の僕と別れることは退路ではなく、多少なりは身近で曲がっているにせよ、遠くの方では苦労なく真っ直ぐ続いている進路だったのだ。そして、彼女が指摘した僕の致命性は、僕自身が自覚していた致命性に他ならなかったから、僕の唇からはあの苦い微笑みが溢れているのだ。「努力をしてほしい。そしてその物事に没頭してほしい」換言すれば、それだけのことだった。「一人が二人と調和して続いていく暮らしにあなたは必要よ。あなた以上に相応しい人なんていない。そこまで断言出来るわ。でも二人を一人と一人に分割する時間も私には必要なの。その時、あなたは余りに未熟なの。」彼女は婉曲に婉曲を塗った言い方で、僕の心に生涯の十字架を背負わせないよう取り繕っていたが、彼女の主張の深度はかつてないものだったので、婉曲に迷ってずるずると論旨が逸れていくことは決してなかった。

「いつまで餓鬼なのよ。個として自立しなさいよ。」寝る前に、彼女の婉曲を省いた真実が頭を過ると、劣等感は取り留めのない飛沫となって、僕の神経を一つ一つ起こした。そして、今、僕は文字を書くことになっている。いつからだろう。芸術は怠惰の袋小路だと気がつき、躍起になって出口のない壁と頭突きを繰り返すようになったのは。寝むれないけど、寝るしかない夜があって、多分それは今日なので。寝ます。みんなも寝れるといいね。おやすみ。ね。

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